供述録取書をなくそう!
いまさらと思われる方いるとは思うが、最近、真面目にそう思った。
いわゆるオレオレ詐欺の出し子役を紹介したという窃盗幇助の事件である。
依頼人は、何らかの犯罪に使われると気付いていながら、友人を紹介したことは認めていた。ただ、依頼人は、「ヤバい金」を運ぶような仕事だと思っており、出し子だとは思っていなかった。法律上は、窃盗幇助の故意否認である。
しかし、出し子やその他の関係者の供述録取書では、「出し子だと紹介された」等の記載があった。
この事件は、少年事件なので伝聞法則の適用がない。開示された証拠には、出し子らの供述を弾劾できる材料はなかった。
依頼人の一回の中間審判で終わりにしてほしいという意向もあり、出し子らの証人尋問は行わなかった。
裁判所は、あっさり出し子らの供述録取書を根拠に、依頼人の窃盗幇助の事実を認定した。
出し子らの供述録取書が、どのような取調べ過程の中で作成されたのか、本件は録録が存在しないので、検証のしようがない。
そもそも、取調べは、捜査機関が求める結論に至る事実を獲得する場で、真実究明の場ではない。
ちょうど、上記の事件と同時期に受任していた事件で、依頼人が言っていないことが調書に書かれていると言っていた。
依頼人は、被疑事実を認めていた。
弁護人に就任した後は、取調べ拒否、黙秘、署名押印拒否を提案した。
依頼人は、取調べで話さないことは不安なので、話はすると言って、ほとんどの調書の署名を拒否したが、数通の供述調書には署名をした。
後日、話をしていると、話してもないことが調書に書かれているという。だから、署名しちゃだめなんですよ、と言ったが、後の祭りである。取調べで疲れ切った、しかも犯罪構成要件にはまったくの素人の被疑者が、読み聞かせという儀式を経て、署名・押印をしたことによって、真実性が担保されるという手続は、正直言ってどうにかしているとしか言いようがない。